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地獄のイベント会場へようこそ

「やだああああああ」
 ミーシャは泣き叫んでいた。
 ここがどこなのかも分からない。現実ではないことは分かっていた。
 ここはゼーレヴィア。
 だがしかし、ゼーレヴィアとは分かっていても、なぜか、いつもと雰囲気が違っていた。
「さあさあ皆様、準備はできてるだろうか!」
 シズの高らかな声が響き渡る。ミーシャは周りを見渡して、自分と同じように座る人たちを一人ひとり見やった。
 白夜、レヴィアス、蛍、グレン……他にもたくさんの人が、丸いテーブルを囲むようにして座っている。誰も彼もがゼーレヴィアで見たことのある顔ぶれなのだが、何かがおかしい。皆の視線がある一つに集中している。
 そして、その視線の先にあるのは。
「早食いゆでたまご競争間もなく始まるよ! 誰が一番早く! そしていかに多くのたまごを完食するのでしょうか!!? それは誰にも分からないー!」
 そう、そこには大量のゆでたまごの山があった。
 以前、このゼーレヴィアの鶏に関する怖い話を聞いてから、鶏もたまごもそれとなく避けてきた。
 そのはずなのに、目の前にあるこれは何だろう!
「優勝者には豪華な景品もあるらしいから存分に食べて! そして、勝利を掴め!!」
 なにが悲しくてゆでたまごを食べなければいけないのだろう!
 どうしてこんな恐怖に包まれた会場にいるのだろう!
 そもそも、なぜこんなとこにいるのだろう!!
 溢れる疑問は尽きないが頭の中をぐるぐると回るばかりで何の解決にもならない。
 そうこうしているうちに、シズがマイク片手に高らかと腕を振り上げた。
「さあ! 時間無制限!! 早食いゆでたまご競争開始ー!!!」
「無制限で早食いってなんだああああ」

「うるっさい!!」

 ごつん、と脳天に落とされた衝撃。
「いったあああい」
 ミーシャは頭を押さえて、思わず飛び起きた。
 ……飛び起きた?
「……あ、あれ? ゆでたまご早食いは……っ!?」
「お前何言ってるんだ」
 呆れた様子のラシュウが目の前にいる。
 おや、と思って辺りを見渡すと見慣れたレレンティカの宿の一室だ。
「ゆ、ゆめ……?」
 あのゆでたまご競争は、夢、だったのだろうか……。きっとそうだろう、これが現実。思わずほっと安堵の息を吐いてしまったミーシャを、ラシュウが訝しげに見ていた。
「とりあえずさっさと起きろ。もう昼過ぎてるぞ」
「えっ」
 ラシュウの言葉に慌てたミーシャは、ばっとベッドから飛び起きた。レレンティカのご飯は美味しいので食べ逃しはしたくない。
 ベッドを片してラシュウとともに部屋を出たミーシャは、もう夢に見ていたことは忘れてしまっていた。
 その後お昼に出てきたゆでたまごを見てミーシャが顔面蒼白になって卒倒しかけた理由は誰も知らない。

お題 by 招き猫

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