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変わらぬモノは確かにここに

「開いてるかーい」
「……そういうのは、扉を開ける前に聞くもんだよ」
 突然開いた扉と、愉快な声。
 カウンターの前でうたた寝していたレレンティカは、予期せぬ珍客の登場に驚きを隠せぬままそう言った。
「まあまあ、そんなこと言わずに」
「実際に開いていたんだし」
「そうそう。あ、先にお土産を渡しておこう」
 続々と扉の向こう側からやってきたのはカリィ、白夜、隻真の三人だった。これまた珍しい顔ぶれにレレンティカは目を丸くしながら、ゆったりとした動作で立ち上がった。
 お土産、と称して包みを渡してきたのは隻真。レレンティカはそれを受け取ると「ああ」と納得した。中身は開けずとも分かる。
「ありがとうね。これで暫くはティータイムが楽しみになったよ」
 最近は自分で調達した物をつまんでいたが、流石に飽きてきていた。
 これで明日からは休憩時間が楽しみになってきた。
「それは良かった。茉莉茶も持ってくれば良かったな」
「さすがにそこまではいいよ」
「? それはなんだい?」
 白夜が不思議そうにレティカの手元を覗き込んでくる。
「月餅だよ」
「月餅?」
 レティカの答えにも白夜は首を傾げるばかり。カリィは合点がいったのかなるほどと頷いた。
「隻真のとこの菓子か」
「レティカ殿が所望していてな。ここに立ち寄るついでに持ってきた」
「白夜は食べたことなかったかな?」
「うーん、あったような、なかったような……」
 曖昧な返事をする白夜に、レティカはそうだと包みを持って歩き出した。一歩、二歩歩いたところで足を止めて、振り返る。
「皆今から時間はあるかい?」
 彼女の問いかけに全員は顔を見合わせて、こくりと頷いた。
「なら今からお茶でもしようじゃないか。たまにはゆっくり話も聞きたいしね」
 そう言い置いて、一人厨房の方へと歩き始めるレレンティカ。さて、茉莉茶は無いけれども月餅に合うお茶はあっただろうか。それにしてもゆったり話をする時間がくるのはいつぶりか。
 今日くらいはゆったりまったり過ごすことにしよう。

 月日の流れは早くとも、ここに在るものは変わらない。

お題 by 花涙

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