『同じ書き出しでどれだけ違うストーリーを作れるか』お試し企画!

52.ひらく様

 たまたま、外へ出ようと考えたのは数十分前のことだ。
 家の外へ一歩出ると、ねっとりとした熱い空気が全身にまとわりついた。これから季節は涼しくなっていくというのに、まだ暑苦しさが残っている。
 額から頬にかけて流れ落ちる汗を乱暴に手の甲で拭う。
 そのまま手を下に下ろすと、少し先に誰かが立っているのに気付いた。

そっと近づき声をかけると彼女は予想以上に体をびくつかせた。
「なにやってんのスズ。」
「なんだ、君か…。脅かせないでくれ、今私は敵から逃げ隠れている最中なんだ。」

そう言いながら電柱の陰に隠れつつ彼女が見つめる先には、あぁなるほど。
「スズー!どこいったー!!でてこーい!!」
ずしーんっずしーんっ、と効果音がつきそうな身長は2メートル近く、体重は0.1tは超えているであろう巨漢が叫びながら歩いてくる。

「敵とか言ってやるなよ、純粋な好意を行動で示してるだけだろ?」
相も変わらず流れる汗をぬぐいつつ、そっと電柱の陰に一緒になり隠れる。

「敵だよ、あいつあのガタイで私の事思いっきり抱きしめたんだぞ?生命の危機だよ本当…。」
この気温のせいで熱くなっているはずのアスファルトも物ともせず四つん這いになり身をひそめる彼女の頭をなでながら僕は
「そうか。束縛なんてされるタマじゃないもんな、お前。」

なんて、そっと彼女の好きそうなセリフを吐いてみると
「そう、私は私が傍に居たい人としか一緒に居たくなんだ。」
そう言いながら僕の指をそっと舐めた。

傍から見たら、僕等はどんな風に映っているのだろう。
かなり奇異の目で見られるんだろうな。
「スズー!どこだよー出ておいでー!」
プラス、あれもかなりアブナイ奴に見えるだろう。

愛する者を探しこの暑い中喉をからし叫び続ける大男と、彼が探す愛猫と会話する男。
「暑さにやられたように見えるかな。」
「にゃ?」

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