『同じ書き出しでどれだけ違うストーリーを作れるか』お試し企画!

99.まりも様

 たまたま、外へ出ようと考えたのは数十分前のことだ。
 家の外へ一歩出ると、ねっとりとした熱い空気が全身にまとわりついた。これから季節は涼しくなっていくというのに、まだ暑苦しさが残っている。
 額から頬にかけて流れ落ちる汗を乱暴に手の甲で拭う。
 そのまま手を下に下ろすと、少し先に誰かが立っているのに気付いた。

 目を疑った。
 もう一度、目元を念入りに汗を拭う。

 そこに立っている姿は確かに、「私」だった。
 蜃気楼? 鏡? それともこれは何かの夢だろうか?
 私と「私」は数秒にらみ合った後、同時に口を開き――
 そこで私の記憶は途切れる。

 今思えば、これが、『僕と私の事件』のプロローグだったのだ。

 蝉の声が、うるさい――……

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